当たり前すぎて考えたことがないかもしれませんが、人はなぜお葬式をするのでしょうか。
実は、お葬式にはいろいろな意味や役割があります。
今回の豆知識では、より深くお葬式のことを考えて理解していただけるよう、「なぜ葬儀をするのか」を詳しくご説明させていただきます。
人間は死者を埋葬する唯一の動物
フランスの歴史学者で、死についての学問を本格的に切り開いた人として知られるフィリップ・アリエス(1914~1984)は『死の文化史』の冒頭で「かねてより信じられてきたように、人間はみずからが死にゆくことを知っている唯一の動物だ、ということは、実は確実ではありません。そのかわりに確かなことは、人間が死者を埋葬する唯一の動物だということです」と記されています。
葬儀の5つの役割
人は誕生と共に成長していき社会生活を営みます。しかし、生があるところには必ず死があります。人が亡くなるとどういったことが起こるでしょうか。
葬儀の役割は主に5つあります。
1.社会的な処理(社会的役割)
・人は社会的に生きている存在です。社会がその死を処理する必要があります。その人の死を通知したり(報告)、社会の人々が集まってその死を確認(会葬)したりします。
・現代では、死亡届を役所に提出し、戸籍から抹消すると共に、相続などの手続きが必要となります。
2.遺体の処理(物理的役割)
・死者の身体である遺体は、生命を失うことにより腐敗していきます。そのため、死者の尊厳を守るためにも遺体を土に埋める、火で燃やすなどの処理を行う必要が出てきます。
3.霊の処理(文化/宗教的役割)
・人が死ぬことにより、生きているこの世では、その人と残された者との関係が閉ざされます。したがって、亡くなった人の霊を「この世」(現世)から「あの世」(来世)に送り出してあげる必要があります。私たちは死者の霊を慰め、あの世での幸せを祈ると同時に、死者と残された者との間に新たな関係(神様・仏様・ご先祖様)を作り上げることを迫られます。この世の営みを超えるものであるため、宗教的な儀礼を必要とします。これが葬儀式の中心をなすものです。
4.悲嘆の処理(心理的役割)
・人の死は周囲の人に衝撃、悲しみ、心の痛みをもたらします。死の事実を受け入れられないこともあります。周囲の人が死を受け入れるには、葛藤が伴い、長い時間を要することも。臨終行儀(臨終の際の作法)から通夜、葬儀などを経てその後の喪に至るまで、長い時間をかけて行われる葬儀の様々な場面や法要は、心のプロセスに沿うものでもあるのです。
死別の悲嘆は抑制する、逃げ去るのではなく、表に出すことによって癒されます。我慢していると体調を崩す、精神的に疾患を引き起こすこともあります。しっかりと表に出して悲しむことは大切です。
5.命の大切さ/次代への伝承(教育的役割)
・葬儀は、命の大切さを知る一番の機会です。人の死を悼んで集まり営まれる葬儀は、人々に命の大切さ、生あるものは必ず死すべき存在であることを知らしめます。
また、先祖がいるからこそ今、自分がここにいることに気付き、その大切を知る。
子どもはそんな親の姿を見て命の大切さ、先祖の大切さを学んでいきます。そんな後ろ姿を子どもたちに見せていくことが重要で大切なことだと思います。